ある業務分析の失敗例

背景

あるボランティアグループでは、毎月のボランティア参加者の集計に頭を悩ませていました。
このボランティアグループは登録型のボランティアで、その中で自分の得意な分野(班)でボランティア活動を行えるものでした。(下図)

これまでは、全会員の一覧表を作っておいて毎回のボランティア活動終了時に、各自がどこの班で活動したかを記録して、月に一回、各活動拠点の表を集計し、毎月のボランティア参加者を把握していました。

集計した情報は班ごとの活動参加者としてまとめられて、ボランティアグループで回覧されたり、ボランティアを所管する行政に報告するための資料として使われたりしていました。

これまではこうして運用してきたのですが、集計担当者からの発議で、簡単なシステム化を行うことにしました。

要件のおさらい

  • ボランティアグループは、複数の班から成り立っている
  • 活動拠点が複数ある
  • ボランティアメンバーは、どの班に参加しても良い
  • 班のメンバーは、毎回の活動ごとに異なる(同じ班に良く参加する人もいるし、たまにしか参加しない人もいる)
  • 同日中に、(午前と午後など)複数の班で活動を行うメンバーがいる
  • 最終的な集計結果は、班ごとの人数として回覧される(ボランティアメンバー個人の情報は含まれなくなる)

デジタル化に挑戦

Google Formを使ったアンケートページを作って、班を選択→参加したメンバーを記入する仕組みを構築しました。

月に一回、班の代表者が入力を行い、集計担当者が月末に集計してボランティアメンバーの参加状況を把握するようにする仕組みでした。

発生した問題

【班の代表者によるボランティアメンバーの入力が面倒】

班の代表者が月に一回入力を行う仕組みにしたことで、一人で複数人の情報を入力する必要が生じてしまいました。
(これまでは自分の面倒だけを見ていればよかったのが、他人の面倒まで見る必要が出てきました)

【たまに活動に参加するメンバーの入力が自由入力になっていた】

よく活動に参加するボランティアメンバーについては、メンバーを記入するときにチェックボックス形式で記入できるようにアンケートフォームを作っていましたが、自由入力されたボランティアメンバーについては、氏名から集計担当者がどのボランティアメンバーなのかを探し出す必要が生じています。

【負担が班を代表して入力するメンバーに集約されてしまった】

先述したように、これまでは個が担っていた仕事を代表メンバーが行う形になったので、負担が集約されてしまいました。

原則として平等に負担しあう必要があるボランティアコミュニティで、こうした負担の集約が生じてしまうのは、ボランティアコミュニティの持続性に問題を残してしまいます。

何をミスしたのか

観察すると、業務の流れを変えてしまった事がひとつの要因になっていると考えられます。

つまり、これまでの業務は「誰が」→「どこの班で」活動したかを記録していましたが、デジタル化する過程で「どこの班で」→「誰が」活動したかを記録する形に変わってしまっていることが見て取れました。

ここに合理的な理由があれば負担が軽くなったり、効率化の面で効果をあげられたのかもしれませんが、実際にはこれといった効率化も図られていないように見えます。

デジタル化を主導した集計担当の人の頭の中に、班ごとに集計するという最後の作業が強く印象付けられていた可能性が考えられます。

あるいは、解決したい課題が明確化されていなかった(参加状況の把握をデジタル化したいのか、集計をデジタル化したいのかが誰もわかっていなかった)事にも一因があると思われます。

どう解消していくか

まずは、業務の流れを「誰が」→「どこの班で」の形に戻すのが良いと考えられます。

そのうえで、Google Formsで自由記入になっている項目を排除するのが良いでしょう。

同じフォーマットで得られるようになれば、入力データの粒度がそろうので、集計の負担も下がると考えらえます。

業務の流れを変えるときには、きちんと分析された根拠がないと余計な混乱を招く事例として紹介しました。